エピローグ

 彼女は真っ赤なサマードレスを着て、カウンターの向こうのバーテンダーと話していた。

「誰が最初に言い出したのかしら。『本当のことは言ってはいけない』って」

 バーテンダーはカクテルグラスの淵までぴったりと真っ赤なカクテルを注ぐと、紙のコースターに乗せて彼女の前に滑らせた。彼女は一口含むと、今日も上出来とばかりにダウンライトに双眸を光らせて微笑んだ。


「覚えていませんが、どんな物語にも《嘘》は含まれています。ファンタジーであればもちろんのこと、ノンフィクションであっても、人間の主観という嘘がございます」

 彼女はクスリと笑う。

「貴方は主観すらも《嘘》と言うのね」

「人間は恣意的に世界を見ますから」

 シェイカーを水に浸して、バーテンダーは続ける。

「ここの店主は《嘘》を愛していらっしゃいます。時に人を欺き、傷つけ、貶めることもある嘘が、いきいきと人を喜ばせるのですから」


――――嘘つきは物語の始まり


 彼女はそう呟くと、カクテルグラスの淵を撫でた。

「全くでございますね」


 これからも続く、虚言者たちの宴。

 人々が物語を欲する限り。

主催あいさつ

主催の佐倉愛斗です。この度は本企画「嘘つきは物語の始まり」にご参加くださりありがとうございました。

この企画は、ある日寝ようとしていたら「本当のことは言ってはいけない」酒場があったら楽しそうだな、と降りてきたものをノートに一晩でまとめたものです。

一人で書くのもいいけれど、他の人の《嘘》も読みたくなって、このサイトを立ち上げ、Twitterで呼びかけました。たくさんの方にお集まりいただきとても嬉しかったです。たくさんの嘘、物語たちを見せてくださりありがとうございました。

虚言者たちの宴は今夜も続きます。

いつかまた、酒場で会いましょう。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

佐倉愛斗